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生と死の極限に生きて





新発田西公園、納骨堂


自著解題




自著の解題を私自身がしなければならないということは、こんな著書を世の中に出すことがおおそれたことであり、価値があるか危ぶまれることをお断りする意図からである。
本著は六十年の記憶を掘り起こすことから始まって現在に結んだ関係で、当時の鮮烈さを失い、現在に妥協したが故に迫力を欠いた感があるのではと危惧している。
しかし、私は過去と現在を繋ぐ時、過去は過去のものとして葬り難いものがあり、その歴史は点でなく、線として織られているものと考える。
「現在」は「過去」を離れてはあり得ないという月並みな表現であるが、あの忌まわしい過去の事象をいつまでも引きずっていてはならない。
さりとて無価値なものにしてはならない。

私自身、戻すことのできない人生の中で、二十歳代の全青春を戦争に費やした。
そして残された人生、時間は少ない。
私は戦争で過ごした約十年間を決して無駄にしたとは思っていない。
いまの社会生活に糧となる生き方の多くを経験した。
だからといって復古調を讃え、取り戻そう等という意識は毛頭ない。

国家も日本民族の運命も数奇なほどに国際社会のはざまで奇跡的な発展を遂げた。
しかし、将来に、恒久的平和と富が築かれたとは思っていない。
過去に鑑みて目を開いてゆかなければならない。
本著がそんなところまで端緒を得られるとは思っていない。
いくらかでも次代への警鐘となるものがあれば望外の幸せである。
最後に、本書発刊にあたっては校正をはじめとして見田政男氏に大変お世話になりました。

そして新潟日報事業社からは理解のあるお力添えをいただき、深く感謝申し上げます。

平成七年八月



生と死の極限に生きて

平成七年八月十七日印刷

平成七年九月十一日発行


著者 長谷川 榮作

制作―新潟日報事業社



新発田西公園、ガダルカナル島慰霊碑



新発田西公園、ガダルカナル島慰霊碑2



新発田西公園、ガダルカナル島慰霊碑3






新発田西公園、ビルマ慰霊「パゴタ」の塔











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